14.「心と体問題」「医療費問題」最大のテーマ

心身症とは

 心(精神)の問題を、多くの方は、「心(精神)の病」「心(精神)を病んだ人」など、精神的側面の不具合・不調・問題・病気と考えている。 
 それは、間違いに近いくらい、狭く、部分的な理解であると云わざるをえない。
 極端に云うと、人間は「肉体(身体)と精神(心)」で出来ている。この両者が離れたら人間ではなく、水・蛋白質・脂肪etcの物質になってしまう。
身体の調子の良いときは、気分も明るく・晴れやかですが、逆の時もある。
また、気持ちが沈んで暗く、気分の良くない時は、体調もイマイチで、仕事も勉強もあまりよく出来ませんが、逆の時もある。
このことから「肉体(身体)と精神(心)」は、相互に影響しあっていることがわかります。多くの人は体験的にも知っている。
ですから、心の問題は「心(精神)にだけ特化して考えてはいけない」問題なのです。
 人間の「心の問題」は、その人の人間としてのあり方、人生、その人のすべての活動と関連させて考え、対応しなければならない問題なのです。一番身近な問題である「心(精神)と身体」の関係を考えてみたい。

「心身症」の可能性の高い病名リスト

昔から、「病は気から」とか、「消化器は感情の共鳴板」などと言いますし、気持ちの悪い「モノ」を見ただけで、触りもしない、臭いもかがない、舐めもしない、食べもしないのに「鳥肌が立つた」経験のある人がいます。ただ見て気持ちが悪いと思っただけ・感じただけ(心の状態)で、肌にあのような変化が起こります。
また、驚いたり、怒ったり、恐怖を感じたり、興奮したり、不安になったりする「心の状態に変化が起きる」と、心臓は早鐘のように脈打つし、血圧も急上昇します。このように、心の状態で身体に大きな変化が生じることを、多くの人は体験的に知っています。
日本心身医学会では、心の状態が身体に影響して、身体の病が発病する関係を心身症と言い。次のように定義している。

心身症とは「身体疾患で、その発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与している器質的ないし機能的な病態をいう。ただし、神経症やうつ病に伴った身体症状は除外する」(日本心身医学会1991)

 

この心身症の定義を乱暴に解説すると:

①心身症とは身体の病気である
②その病気の発病
③病状が良くなる過程
④病状が悪くなる過程に
⑤その人の心の状態や
⑥その人を取り巻く状況が強く関係している
⑦臓器に傷が付くか、
⑧臓器の働きが悪くなる、
⑨病気の状態です
⑩ただし神経症やうつ病に伴った身体症状は含まない(心は病んでいない)

★このような定義を素人が見ても、なかなかイメージができません。
 そこで「心身症」の可能性の高い病名リストを見て、身近さを感じてもらいたいと思います。更に、これらの病気にかかったら、「心・こころ・精神」の健康増進をすることが、必要であることも、同時に理解してもらうことが大切です。
★日常的に「心の健康」増進をしていると、これらの病気になりにくくなるし、かかっても早く治ることになります。日常が大切です。
とても身近な病名が沢山あります。自分自身や家族や仲間などに引き寄せて見て、考えてください。
★更には、頭の天辺から足の先に至るまで、全身に及んでいることにも、注目して下さい。
★医療費対策の視点、人生の豊かさの視点、活力の視点etcから、ぜひ検討して下さい。

1.呼吸器系

気管支喘息/過換気症候群(注1-1)/喉頭痙攣/慢性閉塞性肺疾患など
(注1-1)原因不明。不安・興奮・恐怖・緊張などで起きる。過剰に炭酸ガスが動脈から排出される。発作持続時間10~60分。呼吸困難・息切れ・空気を吸い込めない・胸痛心悸亢進・四肢のしびれ・不安感・めまい・発汗・頭痛・倦怠感・不眠・注意力減退・口渇  [心理療法が必要]

2.循環器系

本態性高血圧(注2-1)/本態性低血圧/(特発性)起立性低血圧/冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)/一部の不整脈/神経循環無力症(注2-2)/レイノー病など
  (注2-1)原因不明。高血圧症患者の90%。頭痛・動悸・肩こり・不穏感・不眠など。降圧剤療法には利尿剤・交感 神経抑制剤・血管拡張剤・ACE阻害剤がある。 [心を安定にする自律訓練法・心の体操などで正常血圧が得られる 例が多い ]
   (注2-2)内科と精神科の境界領域疾患。概念も範囲も捉え方も立場で異なる。胸痛・動悸・呼吸異常・全身倦怠感愁訴あり。説明のための疾患がない。[患者の不安除去が必要]

3.消化器系

胃・十二指腸潰瘍/急性胃粘膜病変/慢性胃炎/過敏性腸症候群(注3-1)/潰瘍性大腸炎/胆道ジスキネジー/慢性肝炎/慢性膵炎/心因性嘔吐/反すう/びまん性食堂けいれん/食道アカラシア/神経性腹部緊満症/呑気症(空気嚥下症)/ガス貯留症候群/発作性非ガス性腹部膨満症など
(注3-1)朝の出勤前登校前にトイレに行きたくなる。トイレに入るとなかなか出られない。通勤・遊学途上の電車内でトイレに行きたくなる腹部膨満感・腹痛・便秘・下痢など便通異常。便秘型・下痢型・便秘下痢交替型・分泌型・ガス型に分類。自律神経緊張が原因。  [精神療法が必要]

4.内分泌・代謝系

神経性食欲不振症/(神経性)過食症/バーター症候群/愛情遮断(剥奪)症候群(注4-1)/甲状腺機能亢進症/心因性多飲症/単純性肥満症/糖尿病/腎性糖尿/反応性低血糖など
(注4-1)感情・母性愛などの健常な交流が妨げられると、行動障害・無欲状態になり成長の障害も起きる

5.神経・筋肉系

筋収縮性頭痛(注5-1)/片頭痛(注5-2)/その他の慢性疼痛/痙性斜頸/書痙/眼瞼けいれん/自律神経失調症/めまい/冷え性/しびれ感/異常知覚/運動麻痺/失立失歩/失声/味覚脱失/舌の異異常運動/振戦/チック(注5-3)/舞踏病様運動/ジストニア/ジストニア/失神/痙攣など
(注5-1)頭蓋や頸部筋の持続的収縮による。多頻度。持続性・両側性・非拍動性・絞扼感・被帽感・圧迫感・後頭部の凝り・肩凝りなど。  [心的緊張が原因の中心]
(注5-2)発作性・反復性。痛みの強さ・頻度・持続時間は様々。食欲不振・悪心・嘔吐。脳血管の収縮と頭蓋内外の血管拡張のため拍動性がある。典型的片頭痛・普通型片頭痛・群発頭痛・片麻痺性頭痛・顔面下部性頭痛の5型。原因不明。  [心の体操で改善事例多数]
(注5-3)原因不明。無意識・不規則・反復。瞬き・歯ぎしり・口ゆがめ・咳払い・首振り・肩ひっこめなど。精神的誘因の除去。  [超有名タレントにある?]

6.皮膚系

慢性蕁麻疹/アトピ-性皮膚炎/円形脱毛症/汎発性脱毛症/多汗症/接触皮膚炎/日光皮膚炎/湿疹/皮膚そう痒(陰部・肛囲・外耳道など)(注6-1)/血管神経性浮腫/壽常性白斑/扁平および壽常性疣贅(ゆうぜい)など
(注6-1)皮膚病変がなく痒みのみがある。局所性と全身性に区分。

7.外科系

腹部手術後愁訴(いわゆる腸管癒着症・ダンピング症候群など)/頻回手術症/形成術後神経症など

8.整形外科系

慢性関節リュウマチ/全身性筋痛症/結合織炎(筋硬結)/腰痛症(注8-1)/背痛/多発関節痛/肩
こり/頸腕症候群/外傷性頸部症候群(いわゆる鞭打ち症)/痛風/他の慢性疼痛性疾患など

(注8-1)原因不明。腰に極限した原因不明の疼痛。血液・尿検査・x線検査で異常なし。[精神安定剤・抗うつ薬などで改善する例あり]

9.泌尿・生殖器系

夜尿症/遺尿症/神経性頻尿(過敏性膀胱)/心因性尿閉/遊走腎/心因性インポテンツ/前立腺症/尿道症候群など

10.産婦人科系

更年期障害(注10-1)/機能性子宮出血/婦人自律神経失調症/術後不定愁訴/月経痛/月経前症候群/月経異常/続発性無月経/卵巣欠落症候群/卵巣機能低下/老人性膣炎/慢性付属器炎/攣縮性パラメトロパチー/骨盤うっ血/不妊症(卵菅攣縮・無排卵周期症など)/外陰潰瘍/外陰そう痒症/性交痛/性交不能/膣痛/外陰部痛/外陰部異常/帯下/不感症/痙攣/流産/早産/妊娠悪阻/微弱陣痛/過強陣痛/産痛/軟産道強靱/乳汁分泌不全/マタニテイーブルーなど
(注10-1)更年期の不定愁訴症候群。自律神経性・心因性。ほてり・のぼせ・発汗・冷え性・頭痛・めまい耳鳴り・不眠・しびれ・知覚鈍麻・肩凝り・腰痛・頻尿・疲労感食欲不振など。自覚症状のみ。 [心理療法が有効]

11.眼科系

中心性漿液性脈絡網膜症/原発性緑内障/眼精疲労/本態性眼瞼けいれん/視力低下/視野狭窄/飛蚊症(注11-1)/眼痛など
(注11-1)眼前に蚊・煤が飛んでいるように見える。

12.耳鼻咽喉科系

耳鳴り/眩暈(メニエール病・動揺病)/心因性難聴/アレルギー性鼻炎/慢性副鼻腔炎/臭覚障害/頭重/頭痛/口内炎/咽喉頭異常感症/嗄声/心因性失語症/吃音など

13.歯科・口腔外科系

顎関節症/牙関緊急症/口腔乾燥症/三叉神経病/舌咽神経痛/特発性舌痛症/義歯不適応症/ある種の口内炎(アフター性・更年期性など)/補綴後神経症/口腔・咽頭過敏症/頻回手術症など

14.小児科系

気管支喘息/過換気症候群/憤怒けいれん/消化性潰瘍/過敏性腸症候群/反復性腹痛/神経性食欲不振症/周期性嘔吐症/(神経性)過食症/呑気症/遺糞症/下痢/異食症/起立性調節障害/心悸亢進/情 動性不整脈/神経性頻尿/夜尿症/頭痛/片頭痛/めまい/乗り物酔い/チック/心因性けいれん/意識障害/視力障害/運動麻痺/バセドウ病/糖尿病/愛情遮断性小人症/肥満症/アトピー性皮膚炎/慢性蕁麻疹/円形脱毛症/夜驚症/吃音/心因性発熱/便秘/抜毛/遺尿症/視力障害など

一つ一つ解説はしませんが、これらの病名リストを見て感じることは、
 1.身体全体で、頭の天辺から足の先までに及んで、非常に多い。これらの病気は身体の病気ではあるが、心の状態と関係しているのだから、「心の状態」を改善・健康増進することが、どれほど必要かを自覚することから始まりです。
 2.すごく身近で、日常的なものが多い
 3.まさかこの病気が、心の状態と関係しているとは、想像もしていない病気がある
 4.感染症など細菌性の病気がない

誤解をしないために

これらの病気は、心の状態と関係しているというのですから、これらの病気になったら「心が病んでいる(心の病気・ノイローゼ)」のでしょうか。もし、このような状態になったら、心が病んでいるのだとしたら、
循環器系の本態性高血圧や 
消化器系の胃・十二指腸潰瘍や 
整形外科系の肩こり等になったら、心が病んでいることになります。そのようなことは、絶対にありません。
 病気ではないが、心の状態が関係(「心の状態イマイチ」を参照)していることは事実です。
 自分も、周囲の人も気がついていないのですが、心の状態が「コチコチ・カチカチ」になって、健康度が低下しているところへ、多種多様な刺激が降りかかってきて、その刺激を受け止めそこなっている結果として、このような身体の状態になっているのです。
 コチコチ・カチカチの心の状態をマサージをして「もみほぐす」ことが必要なのです。有力な心のマサージ法に「心の体操」があります。
メンタルヘルス総合研究所 久保田 浩也